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- 飼い猫
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2014.04.28 Monday▼一緒に仕事を請けているN氏から連絡があった。N氏は、ホームズという名の、とても愚かな猫を飼っている。愚か、かつ、ふてぶてしい。まったくホームズっぽくない。ホームズの具合が悪く、病院に連れて行きたいから、打ち合わせはわたし一人で行ってくれないかということだった。打ち合わせ終了後、N氏から連絡があった。
「打ち合わせどうだった?」
「無事、滞りなく終わったよ」
「本当に?なんの問題もなく?」
「うん。先方のJさんて感じいい人だね」
「うわー、うまくいっちゃったかー。先方が怒りだして無茶苦茶になればよかったのに」
「は?」
「いや、俺なしでうまくいくと、必要ないみたいでさみしい‥‥。『やっぱりNさんがいないと、うまくまとまらないね』という展開が欲しかった。だから、失敗するように念じていたのだ」
「相変わらず、清々しいほどのクズですなー」
ホームズの具合も一段落したそうで良かった。
ペットを飼う責任についてちょっと考えていた。子供の頃に金魚を飼っていた。金魚は、ポンプで酸素を送ってやらないといけない。祭りで買ってきた金魚なども、酸素を送らないと翌日にはバケツや水槽から飛び出して死んでしまう。(水中の溶存酸素を管理して、エアーポンプなしで飼うことも可能ですが素人には難しい。)
祖母のお通夜で田舎に帰らなければならなくなった日のことである。両親は先に出発していた。わたしは遅れて家を出たが、水槽のポンプを入れてきたかどうか憶えていなかった。途中の駅から引き返し、家に戻り、それからまた田舎に向かったのでお通夜に危うく遅れるところだった。母にはずいぶんと怒られた。
金魚など、死んでしまったらまた飼えばいいというのもわかるのだけど、勝手に飼って生き物の自由を束縛しておきながら見殺しにするというのは飼い主の責任に欠けるというか、どうもよろしくない気がする。わたしは祖母が危篤だったとしても、金魚の酸素を入れに戻ったのだと思う。
で、今回、N氏は仕事をほっぽり出してホームズを病院に連れて行ったわけだが、これは仕事に対する責任に欠ける。まあ、欠けてもいいんでないのと思う。二十代の頃なら「仕事をほっぽり出すとは、けしからん」と怒ったかもしれん。正直なところ、今では「どんどんほっぽり出しなさい」という心境である。仕事をほっぽり出しても、何かが死ぬわけでもなし。
仮に今回無理してN氏に打ち合わせに来てもらったとする。その間にホームズが死んでしまったらどうだろう。仕事に対する姿勢は立派だけど、それでも内心どこか軽蔑してしまう気もするのだ。こういうことを考えると、どうも生き物は飼えない。
今朝、ホームズが夢に出てきた。人の家の猫が夢に出てくるなど、まずない。いつもはふてぶてしい態度なのだが、どこかさみしそうで、ふいと踵を返すと静かに去っていった。目が覚めて妙な胸騒ぎがした。虫のしらせというか、最後のお別れにわたしのところに挨拶に来たのだろうか。朝食を摂っている間も落ち着かなかった。
朝食後、N氏に仕事の確認をするフリをして電話をした。仕事の話もそこそこにホームズの具合を尋ねた。
「いや、それがさあ、病院から戻ったら食べるわ食べるわ。そのあとに寝るわ、また起きて食べるわで、ふてぶてしさ倍増」
あのー、そこは死んでてくれないと困るんですが。虫のしらせのはずが。ま、元気なら、それはそれで。どうかお大事に。
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- 抜ける
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2014.04.25 Friday▼友人夫婦の家にお邪魔。友人夫婦の子ター坊(小学5年)と話す。その場にいた全員から「反抗期がなさそう」と指摘され、単純扱いされたター坊は不満そうであった。ややむくれた様子で自分の部屋にこもり、しばらくすると出てきた。反抗の用意が整ったのか、声高に宣言した。
「前から言おうと思ってたんだけど、朝はパンよりご飯がいいと思ってたんだよね!」
それは反抗のつもりなのか。どこまでも抜けていて素晴らしい。そのままで行ってほしい。
▼ター坊、抜けているだけでなく鋭いところもある。ター坊が小学校低学年の頃、「読んでくれると嬉しい」と、童話「北風と太陽」を持ってきた。北風と太陽は、どちらが旅人の服を脱がせるか腕比べをする。北風が強風を吹かせると旅人は服を脱ぐどころか、体を抱きしめてしまう。今度は太陽が気温をあげると、旅人は自然に服を脱いだという話。
これは北風よりも太陽の方が自然なやり方でよいというのが、ふつうの読み方かもしれない。でも、ター坊は「遊びで服を脱がせるのって良くないよね」と言った。一見、太陽のやり方が正しいような気はするが、実は北風も太陽も、たいした意味もなく旅人の服を脱がせようとしている。太陽の方がやり方がソフトなだけだ。
ター坊は人の気づかぬことに気づくことが多いし、話の裏を見抜くことも多い。こういう鋭さを持った人は生きにくい気がする。特に10代〜20代までは大変かもしれない。自分が持ってる鋭さで、言わずもがなのことを言ってしまったり、気づいても言わないことでストレスを抱える。鋭さを冗談でくるんだり、柔らかく言えるのは、また別の技術である。それは歳をとらないと難しい。
ただ、鋭さに対して救いになるのが、鈍さや素直さ間抜けさ愛嬌なのではないか。頭の良さは本を読んだり、話を聞いたり、勉強したり、いろんな方法で伸ばすことができる。でも、鋭い刀と対になる鞘の部分、この間抜けな部分を伸ばすにはどうしたらよいかは難しい。頭はいいのに、まったく魅力的ではない人がいるが、これは頭が良くても解決できない問題かもしれない。
ター坊にはどうか間抜けなままでいてほしい。うっかりでいてほしい。間抜けなままでいられたら、それは一つの技術ではないだろうか。
「その抜けたところがいいんだから、そこを伸ばして行ってほしい」と伝えると、褒められたと思ったのか、両手で頭を抱えて「えへへへ。それほどでも〜」と照れるのであった。
あ、この人、まったくわかってないなと思いました。ゆけゆけ、ター坊。ヌケヌケ街道をひた走ってほしい。いや、かなり独走してるので、もう速度を落とした方がいいのかしら。
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- 映画「超高層プロフェッショナル」
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2014.04.15 Tuesday
超高層プロフェッショナル
Steel / 1979年 / アメリカ / 監督:スティーヴ・カーヴァー / ドラマ
高い所に登れるほどえらい!
【あらすじ】
高いビルを建てます。
【感想】
原題の「Steel」(鋼鉄)というのがかっこよすぎる。無骨。鋼のような肉体と意思を持った男たちが高層ビルを建てるという、そのまんまのお話。それでよいのです。
1979年公開ということで、だいぶ古い。映画の雰囲気がのんびりしていて陽気で、何かに似ていると思ったら、子供の頃によく観ていたアメリカドラマそのまんまなんですね。特攻野郎Aチーム、冒険野郎マクガイバー、超音速攻撃ヘリ エアーウルフなど。懐かしいなあ。勧善懲悪、かつハッピーエンド。正しい者は無敵。全体的に、バカかつ女好き。すばらしい。
屈折してない陽気なアメリカが体現された映画。時代の空気を強く感じる。きっと今ではこういう映画は撮れないのではないか。
現場監督のマイク・キャットン(リー・メジャース)は、トラウマから高所に登れないという設定である。それを見抜いた部下から「臆病者の監督の下では働けないぜ」みたいなことを言われてしまう。力を示さないと下がついてこないというのが、いかにもこの時代、この業界っぽいなあと思いました。で、ちゃんとそのトラウマを克服する。
冒頭で、社長のビッグ・ルー・キャシディ(ジョージ・ケネディ)が建築現場のビルから転落する場面がある。映画を観終わった後に知りましたが、スタントマンのA・J・バクナスがマットの上に落ちることができず、着地を失敗して死亡している。後から思い返すとゾッとする場面である。だが、あの場面をカットせずに使ったのは良かった。
ストーリーはけっこう無茶苦茶(鉄骨を盗みに行くとか、最後の場面とか)なところもありますが、まあ、こういう時代だな! ナハハハハ! と、強引に乗り切ってしまえる陽気さがある。乗り切ろう。細かいことは気にしないで楽しめばいいんだと思います。迷いがないとか、強さこそ正義で乗り切れた時代の勢いを感じる。JUGEMテーマ:映画
- 映画「キラー・エリート」
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2014.04.14 Mondayキラー・エリート
Killer Elite / 2011年 / アメリカ、オーストラリア/ 監督:ゲイリー・マッケンドリー / アクション
【あらすじ】
傭兵を引退したダニー(ジェイソン・ステイサム)は恋人と幸せな暮らしを送っていた。
しかし、ある日、彼の傭兵仲間ハンター(ロバート・デ・ニーロ)が監禁されている写真が届く。ハンターを助けたければ、三人の元SAS(イギリス特殊部隊)隊員を暗殺しろという内容だった。なにこのめんどい依頼。
【感想】
ふだんアクション物をあまり観ないから点数が甘めになってしまうかもしれない。面白かったんですねえ。トップ絵がグラサンばかりである。殺し屋はグラサン好きなのかな。ジェイソン・ステイサムとデ・ニーロが対決するのかと思いきや、対決するのはイサムちゃんと元SAS隊員スパイク(クライブ・オーウェン)でした。
とにかくアクションがすばらしい。
これは、椅子に縛り付けられていたイサムちゃんですが、そのまま走り出してクルッと回転して相手の背中で椅子を壊すという曲芸です。曲芸ではない。デ・ニーロもちょいちょい美味しいところを持っていきますし、いいですね。
一応、実話を元にした物語といいますが本当かなあという。そもそも「傭兵」というものについて考えたことがなかった。主人公ダニーは凄腕の傭兵でしたが、ターゲットの車の中に子供が乗っていたのを見て「もう、殺し屋やめる‥‥」となってしまう。繊細なお人やね。よく傭兵やってこれたな。
で、こうやって恋人と田舎で悠々自適な生活を送っていた。しかし、今まで散々殺してきた人がビデオ屋のバイトを辞めるみたいに簡単に傭兵をやめられるのだろうか‥‥。知らんけど。
依頼内容を確かめもせず、ノリと金額で引き受けたハンター(デ・ニーロ、左)は依頼を失敗。依頼主に監禁される。その失敗した依頼をイサムちゃんが代わりに果たせというもの。で、殺人ではなく事故死に見せかける工夫とか、交通事故を起こさせる工夫とか、最近の傭兵の暗殺技術ってものすごいんですね。狙われたら死ぬしかない。
ダニーの恋人をハンターが護衛する場面がある。最初、彼女はハンターを警戒するものの、ハンターの人懐こい笑みで、ものの30秒ぐらいで親しくなってしまう。懐に入り込むのがとてもうまい。傭兵という職業のわからないところであるが、これはもし彼女を殺す依頼が出た場合、友人のようになっていてもあっさり殺すのだろうか。傭兵には傭兵の倫理観があって、こういう人間は殺さないというのがあるのでしょうかね。
この映画でターゲットにされる元SAS隊員はたしかに悪辣なことをやっているが、そうじゃない場合も現実には存在する。国の邪魔になるとか。そういうことを考えると、ちょっとモヤモヤしないでもない。映画は勧善懲悪アクションという内容で楽しめました。
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- いいともの終了
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2014.04.12 Saturday▼そんなわけで久しぶりに日記を書いている。などと書けば、前回に何かあったのではないかと前回の日記を見る方がいるかもしれないが、特に何もない。もはや読んでいる人がほとんどいないのにフェイントをかけてしまった。何をやっているのか。
久しぶりに書くのに夢の話というのもどうなんだと思うが、変な夢を見た。メイド服を着たヒゲ面のおっちゃんが出てまいりまして、それはもう肩幅もあるゴリゴリのおっさん、純然たるおっさんである。赤井英和に似ている。その人が「おまえを不老不死にしてやる」と言う。メイド服姿で。
で、やったー!と無邪気に喜んだのですが、待てよ、と思った。不老不死ということは病気にもかからず、老衰で死ぬこともないのだろう。その無敵状態で死ぬとすれば、事故や殺人など、かなり悲惨な状態で死ぬのではないか。必ず恐怖を味わうことになる。だから、不老不死にしてやると言ったおっさんに対し「えっと、今、間に合ってます」と答えた。新聞の購読を断る感じで、不老不死を断った。赤井さんはすごく残念そうな顔をした。すまぬ。
不老不死になりそこねたまま日記を書いている。
▼あまり日記を書かずにいた間に「笑っていいとも」が終わっていた。今更「いいとも」の話ですけども。タモリ、明石家さんま、ダウンタウン、ウッチャンナンチャン、とんねるず、爆笑問題、ナインティナインなどなど、錚々たるメンバーが同じ画面に収まった。子供の頃から観てきた人たちが一同に会した光景に、久しぶりにワクワクした。
仕事をもらっている会社に行ったとき、番組の話をした。三十代の人は、だいたいみんな似たような感想だった。でも、テレビを観ないという二十代半ばの人は「なんだかワチャワチャしてて、よくわからない」と言っていた。確かにまとまりはなかった。何が起こるかわからない感じと、あのメンバーが集まったというだけで良かったのだけど、番組の完成度としてみたら低いのかもしれない。
プロレスの試合では特別な試合というのがある。橋本、小川戦や武藤、高田戦など。長い時間を経てきて、因縁とファンの期待が高まり、ついにあの二人が激突ということになる。その積み上げたストーリーのようなものが、ふだんテレビを観ないと言った彼にはなかったのだろう。とんねるずやダウンタウンがかなり無茶苦茶やっていた頃を観ていないと「あの二組がついに」とはならないかもしれない。そういう人から見ると、いいともの最後は「ワチャワチャしてて、よくわからない」というのもうなづける。
なんだろうねえ、これ。ようは、わたしが歳をとったということを書いたような。JUGEMテーマ:日記・一般
- 映画「マージン・コール」
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2014.04.02 Wednesdayマージン・コール
Margin Call / 2011年 / アメリカ / 監督:J・C・チャンダ― / ドラマ
おまえら全員、不幸になっちまえ!
【あらすじ】
サブプライムローン問題をきっかけとした2007年の世界金融危機を元に作られた作品。金融危機前後二日間の大手投資銀行(リーマン・ブラザーズがモデル)では従業員たちがてんやわんやしておりました。
【感想】
世界同時不況へ繋がる2007年の世界金融危機で、大手投資銀行リーマン・ブラザーズの中がどうなっていたかということはわからないわけです。この映画は、あのとき何が起きたということよりも、ああいった場所で働いている人はどういう価値観を持っているか、どういった種類の人間かということに焦点を当てているように思いました。
一言でいうと、監督の憎悪がすごいなという。もう、こういった人たちが大嫌いなんだと思いますよ。投資家なんてのは、投資してなきゃ競馬でもやってんでしょとか、あいつら結局なんでもいいんでしょと、映画中で言わせてますし。投資家だけでなく、投資銀行や証券会社、みんな含めて大嫌いという。
会社をクビになったエリック・デール(スタンリー・トゥッチ)の橋の話に集約されている。投資銀行に勤める前は建築に携わっていて、そのときに橋を作った。その橋のおかげで目的地まで35マイル、ショートカットできた。この橋を通るのは1日何万人で、その距離は合計何マイルになるとか、そういった話をえんえんする。橋という人々の生活に役立つものにくらべ、いったいこの仕事はなんなのだという話だけれど。
しかし、この仕事は本当に給料高いんですよねえ。ポール・ベタニー演じる、中堅社員(でもパシリだったりする)ですら年収2億5000万だし、どうなってるんだ。で、その2億5000万の使い道が、車、服、酒、娼婦を買って余ったら貯金という。富裕層に対する監督の憎悪がすごい。ちょっとステレオタイプすぎる気も。もっと違う人もいるとは思うけど、まあ、悪い人しか出てこないんですよねえ。結局、わたしも「おまえらみんな不幸になっちまえ」と思うに至るわけですが。
価値観の第一がお金であるというのは、それはそれでしんどいと思いました。ここまで行っちゃうとねえ。とはいえ「お金大好きだから逆らえない!」という役で、ケビン・スペイシーも出ております。
この人、従業員の大量リストラの際に泣いている場面がある。実は、自分の飼っている犬が死にそうだからで従業員のことはどうでもいいんですね。リストラ、この世界では当たり前ですし。犬、かわいい!従業員、どうでもいい!である。
本当にクビを切られる速度がすさまじい。ピザを注文して届くより早くクビになる。ピザも頼めんわ。会社に来て5分でクビになってる。すべて書類は用意されており、その場で携帯電話は止められ、余計なことができぬよう監視の人間が会社を出るまでついてくる。アメリカでは法律上、これでなんの問題もないのだろう。
で、大量リストラが行われ、ボーっと元上司を見送る新入社員。明日は我が身なのでした‥‥。何か目的があるわけでもなく、ただ金を稼ぎまくる人たち。その際だった知性の集団がやっていることは、はたしてなんなのか。結局、よくわからなかった。こういった世界もあるのでしょう。
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