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- 映画「テッド」
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2014.02.25 Tuesdayテッド
Ted / 2012年 / アメリカ / 監督:セス・マクファーレン / コメディ
たとえすべてがわからなくても。
【あらすじ】
命が宿ったテディベアと、大人になりきれない男、その彼女。いろいろもめます。
【感想】
少年時代、内向的で友達がいなかったジョン(マーク・ウォールバーグ)。クリスマスに両親から贈られたテディベアのテッドに命が宿るように願った結果、人形は命を持つようになる。ジョンもテッドも成長し、ジョンはレンタカー店に勤務する冴えない男となり、テッドはマリファナ、風俗、酒にどっぷり浸かったテディベアになってしまった。
デリヘル嬢を呼びまくってパーティーを開く熊の図。不良熊だなあ。
働き口を探す熊。スーツを着るとかわいい。しゃべりだすと、完全におっさんなのだけど。
テッドは、テディベアじゃなくて、ジョンの幼馴染でも成り立つのかもしれない。
ジョンとテッドが冗談を飛ばしあっていて、そこにジョンの彼女ローリー(ミラ・キュニス)が入っていくのだけど、うまく入れないんですよね。冗談を言っても、二人から「それは違う」と否定されてしまう。中学や高校の頃は、異性といるより同性といるほうが盛り上がったりしますが、ジョンとテッドは大人になった今でも、その空気が続いている。
この感覚があまりにもわかりすぎるのが怖い。わかる人間て、ちょっと駄目なんじゃなかろうか。わからないほうがまっとうな気がする。もうねえ、このジョンの楽しそうな顔とか。彼女は大事なのだけど、きっとテッドといるときが一番楽しいのだろうなあ。わかるわあ!
とても面白いコメディだけど、コメディというのは、その映画が作られた地域・同世代でないと、完全に理解するのが難しい。アメリカ人にしかわからない言葉を、ゆるキャラの「くまもん」「星一徹」「キラキラネーム」など、日本人でもわかるような言葉に置き換えて翻訳している。翻訳者の苦労が伝わりますねえ。
ハリウッド映画にくまもんが出るわけもないから、くまもんと字幕が表示されたときに、一瞬、これは元の言葉はなんだろう?と考えてしまう。そうなると、映画の内容から注意が逸れてしまう。そういったズレが随所に起きる。もうこれは英語話者になるしか、解決できない問題かもしれない。
がんこ親父を表す「星一徹」という翻訳にも考えさせられた。「巨人の星」という漫画をリアルタイムで観ていないけど、たぶん三十年以上前なんですよねえ。だいたい星一徹がどんなのかは想像はつく。ちゃぶ台を「どりゃー!」って、ひっくり返して怒る人なんでしょ。よく知らんけど。でも、がんこ親父の表現が「星一徹」を使わざるをえないことが、すごい。
日本にはここ三十年ぐらい、星一徹以外のがんこ親父が登場しなかったということになる。小林亜星が演じた寺内貫太郎がいるけど、あれも1974年放送開始なので三十年以上前である。日本では、がんこ親父は絶滅したのかもしれない。などと思うと、笑わせる場面でも、ふーむとなってしまい、なかなか素直に笑えない。
ごちゃごちゃ書いてしまいましたが、全部わからないにしろ(フラッシュゴードンとか)、やっぱりよくできた映画だと思います。面白かったですし。ただ、下ネタが激しいので、誰かと観るときは注意したほうがいいかも。
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- 映画「ハプニング」
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2014.02.19 Wednesdayハプニング
The Happening / 2008年 / アメリカ / 監督:M.ナイト シャマラン / ミステリー
シャマランぽさとは、なんなのか。
【あらすじ】
突如として人々が自殺を始めた。工事現場では飛び降りが起き、警官は銃でみずからの頭を撃ちぬく。テロリストが撒いたガスが原因なのか、新種のウィルスなのか、憶測が飛び交うが原因は不明。どこへ逃げていいのかもわからないまま、人々は逃げ出す。
【感想】
シャマラン監督というと「シックス・センス」の印象が強い。「シックス・センス」を当たりと考える人は「次こそはシックス・センスみたいなものを!」と求めるから、他のシャマラン映画はみんなハズレになってしまうかもしれない。だいたい、ヘンテコなのをぶち込んでくるのです。今回も「何か」が突然始まって、突然終わる。実にシャマランぽいですねえ。
映画の中で何度も「自然界のことは科学では完全に解明できない」と言われる。原因と結果の因果関係というのはあって当然と思われている。理由がなく何かが起きて、理由もなく解決するというのは、現実にはあるかもしれないがスッキリしない。この映画も、人々が突然自殺しだす。で、その自殺現象はやはり突然終わる。そこに説明はない。
本当はすべての現象に理由があるかもしれないが、その真実に人間がたどりつけるかはわからない。シャマラン監督は「シックス・センス」でヒットを飛ばしたものの、以降はわりと同じテーマ「唐突に何かが起きて何かが終わる。人には理解できないものがある」というのを撮り続けているように見える。むしろ「シックス・センス」のわかりやすさこそがシャマラン監督の中では異質で「サイン」や「ハプニング」こそが監督の撮りたいものであり、シャマラン映画の本質なのではないか。面白いかは別ですけども。
今回の主役は、理科教師となったマーク・ウォールバーグ。映画「ザ・ファイター」ではボクサー役を演じました。海兵隊とかが似合いそうなんですけども。見よ、この上腕二頭筋の太さ!それがなぜか、理科教師。世界最強の理科教師になれる。
謎の起用ですねえ。この映画では特に筋肉の出番はございませんでした。マーク・ウォールバーグは、WWEのプロレスラーであるジョン・シナにすごく似ていると思う。
影武者レベルに似ていると思ったが、並べてみると、そうでもなかった。いや、でもかなり似てるんですよ。入れ替わってもわかんない。もし、ジョン・シナを映画化するときはマーク・ウォールバーグでお願いしたい。話が逸れた。
そんなマーク・ウォールバーグの奥さん役は、映画「(500)日のサマー」のヒロイン、ズーイー・デシャネル。この人、毎回変わった女の人をやりますね。今回も変わっていた。マーク・ウォールバーグと、田舎のほうに逃げるんですが、この二人は夫婦仲がうまくいっておらずケンカ中。
で、避難していてテンヤワンヤの中、奥さんが「実は残業で遅くなるって言ったあの日、同僚(男)とデザートを食べていたの!」と告白。もうね、どうでもいい。だって、原因不明の怪現象で、何万、何十万という人が死んでいる。目の前で人が死にまくってるときに、同僚とデザート食べてた話を反省されても。人によっては浮気ですら、どうでもいいというかもしれんが、デザートて。「今それ言う!?」って、画面の前でズコーってなりました。椅子からずり落ちかけたわ。
この非常時にそんな話?と思いますが、現実にこういうことが起きると、心残りなく死にたいという気持ちが強くなるのでしょうか。案外リアルなのだろうか。ほんとどうでもいい話ですけども、このデザート話にかなりの時間がとられてるんですよねえ。謎である。
そして、避難先のおばあちゃんもいい味だしてましたね。ホラー映画によくいる、気味の悪い住民である。この怪現象とは関係なく、ちょっと怪しい人でした。菓子に手を出した子供の手をひっぱたく場面は、ゾッとした。
マーク・ウォールバーグが「木が人間の数を感知してこの現象を起こしている!少人数なら大丈夫だ!」なんてことを言う場面があるのですが、おばあさんはその直後に一人で発狂というのが面白かったですね。オイオイ、人間の数、関係なかったんかーい!という。
観てる側は「わけわからん」となるのだけど、この映画のテーマが「自然界には完全には解明できないことがある」だとすると、納得のいく合理的なオチがつかなくても当然ということになりますね。納得できる終わりなら謎が解明されちゃうだろうし。だから構造上、スッキリすることはない。
ヘンテコな終わり方だから、シャマラン監督は、またみんなに怒られてるんだろうなあ。そう思ってアマゾンの感想を見てみたら、やっぱり怒られてました。なんだこれー!って、言いたい人にはお勧めです。モヤモヤした終わり方だよ。
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- 映画「ロスト・アイズ」
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2014.02.17 Mondayロスト・アイズ
2010年 / Los Ojos de Julia/ スペイン / 監督:ギリェム・モラレス / サスペンススリラー
誰も信じられない、誰からも信じてもらえない。
【あらすじ】
姉の自殺が信じられず、他殺ではないかと疑うフリア(ベレン・ルエダ)。調べてみると、姉には恋人がいたらしいが誰もその姿を見た者がいなかった。
【感想】
「パシフィック・リム」や「パンズ・ラビリンス」の監督であるギレルモ・デル・トロが製作ということで観てしまった。本当は、監督であるギリェム・モラレスに注目しないと失礼なのでしょう。
で、この「ロスト・アイズ」ですが実に良かったですねえ。
主人公フリアの周囲の人々が、みんな怪しい。優しい夫、フリアの主治医、姉の隣人、介護の男性、姉が通っていた施設の人々、怪しくない人が一人もおらん。もれなく怪しい。疑心暗鬼を生ずである。で、姉が通っていた施設の人は、みんなゾンビみたいなんだよ。怖すぎる。
この映画は、残酷な殺され方をしたり、内臓が出たりとか、そういう直接的な怖さよりも、誰を信じていいのかわからない、誰からも信じてもらえないという怖さが強い。変な言い方になりますが、品のある怖さというか。姉を他殺と信じる自分に対し、周囲はフリアの思い過ごしだとして、とりあってくれない。
最近の映画なのですが、ヒッチ・コック作品に似た雰囲気を感じる。ところどころがとても古めかしい。お話のスジも通っていて、ホラー要素もありますがミステリーとしてもきちんと成立している。
一か所、ものすごくいい場面がありまして。フリアは目の病気を抱えていて手術をする。犯人は、フリアに自分の姿が見えているかどうか、彼女の前で試そうとする。もし、見えているのなら殺してしまおうと思っている。そこでフリアは何も見えていない演技をする。ここがねえ、すごく緊張感があふれている。わたしはクッションを抱えて「はわわわわ!」と悶絶した。37歳のおっさんが。実に気持ち悪いですねえ。
ちょっと古目の恐怖映画が好きな方は楽しめるのではないでしょうか。お勧めです。
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- 映画「キャビン」
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2014.02.14 Fridayキャビン
The Cabin in the Woods / 2012年 / アメリカ / 監督:ドリュー・ゴダード / ホラー
すべてのホラーは、この映画のためにあった。
【あらすじ】
バカ騒ぎする大学生、気味の悪い住民、森の奥深くの山小屋、不気味な地下室、ここまで揃って殺人が起きないわけがない!
【感想】
ルービックキューブのような山小屋のポスターがかっこいいなあと、前から気になっていた「キャビン」です。とても実験的な試みに溢れた作品でした。
「マイティ・ソー」でブレイクしたクリス・ヘムズワース(写真中央)がおりますね。他はあまり有名な俳優は出ていません。有名な人が出ていないと誰が死ぬかわからなくて、いいなー。だいたい死ぬんですけども。
ホラーは痛いし怖そうだからあまり観ないのですが、どれも似たようなルールに従って作られている。人里離れた場所で、大学生がいちゃついたりして悪魔や怪物を怒らせて殺されるというのが多い。
映画の中にしろ、残虐な殺され方をするのだから、殺される人間もそれなりにひどい人間であってほしい。だから、バカな学生とか、いちゃついてるカップルとかが起用されるんでしょうねえ。病気の親の看病をしつつ大学に通い、幼い兄弟の面倒をよく見てやり、バイトで生活費を稼ぐ日々。そんな、ひろし君が怪物に殺されたらかわいそうでしょうが!ひろしって、誰。
この映画は、ホラー映画のルールを逆手にとったら面白いってことで作られたのかもしれません。詳しいことを書いてしまうとネタバレになるのでやめときますが。
でも、ホラーを観ていない人が観ても、きちんと楽しめる作りになっています。ホラーでありながらコメディ要素が強いんですよねえ。コメディ要素を強めると、ふつうはホラーが成立しないのではないか。怖くない雰囲気になるので。でも、うまいこと成立してる。
ラスト辺りの急展開や、なんでも入れてしまおうという闇鍋っぷり、さらには大物女優の登場など、お祭り感がすごい。最後はねえ、ゴチャゴチャになっちゃって、ホラーで終わらせることをあきらめたのかもしれない。とんでもなく無茶な終わらせ方になっている。やりようがなくて、ぶん投げちゃったのかなー。悲惨な終わり方ですが悲壮感はありません。「わっはっは!死んじゃったねー!」ぐらい。
ふつうのホラーに飽きてしまった人にお勧めです。予告編はかなりネタバレ気味ですのでご注意ください。
そういえば、日本チームは全然駄目でしたねー。9歳の子供にやられちゃまずいだろうと思う。
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- 許可
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2014.02.13 Thursday▼最近は日記に、友人夫婦の子ター坊(小学4年)のことばかり書いていた。これはまずい。本人の特定がほぼ不可能とはいえ、人の家の子について無断で書いていいわけがない。あと、観察日記みたいで失礼ではないか。
だから書くのをやめようかと思ったが、あれほどの珍獣はそうそういないので、もったいない。ター坊の両親と本人に許可を取れば問題あるまい。ター坊家に行ったとき、それとなく許可を申請した。
「今度さあ、ブログ始めようと思うんだけど」
「へー。今頃、ブログねえ。日記の代わりか?」
「そうそう、そんな感じ。この家のことも書いちゃおうかなあ‥‥」
「どーぞ、どーぞ、ご自由に」
というわけで、友人であるター坊父から許可を得た。これで万事大丈夫。訴訟に発展した際には、これで戦える。今後は晴れて好き勝手書ける。あることないこと書けるはず。あと、今まで書いてきた何十日分かについては時効ということで許してもらいたい。
日記のことを告白して許可をもらうどころか、嘘に嘘を重ねてしまったようだが気にしない。今日は耳もよく聞こえるし、実に晴れやかな気分。どうもこんにちは、佐村河内と申します。
▼こうやって時事的なことを絡めると、そのときはいいんだけど、後で読んだときにわけがわからないんだよなあ。時事的な事柄が入れば入るほど文章が朽ちるのが早くなる。普遍的なことを書くには時事的なものを省くにかぎる。
もっとも、それはちゃんとしたことを書く人の場合ですけど。わたしは、パチンコのチラシの裏にでも書けばいいことしか書いてない。
▼友人夫婦の子ター坊(小学校4年)は、洗面器に雪を山盛りに持ってきた。その雪をこねて、掌と同じぐらいの長方形を作り出した。
「これ、なんでしょーか?」
「何って‥‥。弁当箱かな?」
ター坊は、眉間にシワを寄せて「チッチッチ‥‥、わかってないですね‥‥」と人差し指を振る。鬱陶しい。
「正解は何?」
「正解は‥‥、ipodでーす」
「え、そんなの四角かったらなんでも言えるじゃん」
「わかってないなー。色が白でしょ」
言われてみれば、納得しないこともない。
「じゃ、次のもんだーい」と、ター坊が雪を固めて作り出した。またしても、先ほどと同じような、掌と同じぐらいの長方形の雪の塊である。どう見ても、さっき作ったipodと同じだ。
「こ、これは‥‥、わかった!ipodナノか、ipodミニだろう!」
「ブー!違いまーす。正解は弁当箱です!」
「お、おまえ、さっき色が白いからipodって言ったじゃないか!」
「うん。だから、正解は白い弁当箱」
どうも納得がいかない。小4に、いいように言い負かされている。わ、わしはもう引退したほうがいいんじゃろうか。
▼本当はいくつか書きたいことがあったのに、余計なことをダラダラ書いただけでまったく本題にたどり着かなかった。本題を書こうにも、ある程度書いてしまうと「書く欲」が満たされて「まあ、いいか」という気持ちになる。書きたいことを書くコツは、余計なことを書かないことではないか。当たり前だが。
ある程度、文字が並んでいると達成感が発生してしまう。えーと、じゃあ、今日書いた分を試しに一回全部消してみる?いやあ、それはちょっと気が進まないわー。
進むも引くもできず、めんどうだからこれでいいことにする。
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- 映画「イリュージョニスト」
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2014.02.12 Wednesdayイリュージョニスト
L'illusionniste / 2010年 / フランス / 監督:シルヴァン・ショメ / ドラマ
【あらすじ】
1950年代、パリ。年老いた手品師であるタチシェフの芸は時代遅れになり、観客にうけなくなっていた。都会を離れ、スコットランドの片田舎で手品を披露するタチシェフ。その手品を見た少女アリスは、タチシェフを魔法使いと思い込み、タチシェフと共に旅をする。
【感想】
絵本のように、とても細かく描きこまれた郷愁を呼び起こす絵。どの場面をとっても、一枚の絵になるような完成度です。
ただ、物語はちょっと悲しい。今は人気が衰えた手品師と、その手品師を魔法使いと思い込んでしまった少女の話。少女は手品師について都会に出る。手品師は少女のために、きれいな服や靴を買ってあげる。やがて少女は都会の若い男に恋をする。役目を終えたと知った手品師は、少女を残して旅に出る。
うーん、欝になりかねない展開。暗い。この映画は、新しい物が古い物にとってかわる、時の流れの残酷さを描いたものだろうか。それは物だけでなく人も同じである。
アリスがはじめて街に来たとき、きれいな洋服を着た女の子に目を引かれる。アリスはやがて、手品師から服を買ってもらい、だんだんと街になじんでくる。アリスの姿を、田舎から出てきたばかりの女の子が憧れの目で見つめる場面がある。それは、ちょっと前のアリスそのものだった。
古くなる、老いる、ということはどうしようもない。老いと死からは誰も逃れられない。それはしばしば人生の悲劇とされる。だが本当にそうなのだろうか。老いた手品師タチシェフも、今はまったく人気がなくなってしまった。だが、彼が若かったとき、彼もまた老いた誰かを追いやってステージに出てきたのかもしれない。新しいものが古いものに取って代わるのは自然なことに見える。
映画の最後に、タチシェフが子供に手品を見せる場面がある。老いた者は舞台を去り、若者が舞台に上がる。その交代場面を目撃したようだった。だが何かさびしい。老いて若者に主役を譲るのは良いが、老いることが無価値でしかないというのは残酷に思う。だが、その残酷さが人生だといえば、そうなのだろうけど。同意しつつも、どうにか抗いたい気持ちがある。何か老いる価値を見つけたいのである。
映画を離れて、老いることの価値を考えてみたが難しい。体力は落ち、容貌も衰える。病気にもなるだろうし、頭の回転も落ちる。良いことは、経験が増えて判断力が増すことぐらいだろうか。老いてもきっと良いことがあるはず、ハッピーエンドがあると考えるのは都合が良いのかもしれない。
映画の最後で、タチシェフが子供に手品を見せたのは、若者と老人の交代を示すだけではなく、老人が得た経験をこれからの者に伝えるという意味もあるのか。そうやって命が受け継がれていくという。それは残酷さではなく、かすかな希望ともいえる。でも、やはりちょっとさびしすぎると思う。もう少し希望があってもいい。時間が経てば、また違う観方に気づくかもしれない。また何年か後に観たい。
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- 映画「ぼくの大切なともだち」
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2014.02.09 Sundayぼくの大切なともだち
Mon meilleur ami / 2006年 / フランス / 監督:パトリス・ルコント / コメディ
「僕を感じ良くしてくれ!お金は払うから」
【あらすじ】
友達がいない美術商コスト(ダニエル・オートゥイユ、右)は共同経営者と賭けをする。その賭けとは、10日以内に親友を連れてくるというものだった。
【感想】
パトリス・ルコント監督の映画は、どこかさびしげで少しおかしい。アキ・カウリスマキもそうなのだけど。そこに惹かれます。
友達が一人もいなくて、感じの悪い男を演じるダニエル・オートゥイユ。しかしねえ、ダニエル・オートゥイユってどうしても人柄が良く見えてしまう。かっこいいし。友達がいなくて感じが悪い役というのは、ちょっと難しいのではないか。
もっと人の悪口ばかり言って、人と目も合わせられなくて挙動不審で、たえずおまわりさんに職質されるような、そう、わたしのような人間こそ相応しい気がする。アホか。職質されてないわ。これからされるわ。
で、急遽、親友を作らなければならない羽目になったダニエルさん。「友達なんか、いくらでもおるわ!」と豪語するものの、周りからは「おまえの葬式には誰一人来ない」などと言われてしまう。ずいぶんひどいこと言われて、ちょっとかわいそう。へこみっぷりがかわいいなあ。
たまたま乗ったタクシーの運転手ブリュノ(ダニー・ブーン、写真左)がとても感じが良かった。ダニエルは、ブリュノに友達の作り方を教えてくれと頼み込む。必死にお願いするのだけど、その頼み方がいい。
「僕を感じ良くしてくれ!お金は払うから」
いやあ、もう最高ですね。この感じの悪さ。おまえ、なんで嫌われるのかまったくわかってないなという。この場面を観るだけで、映画を観る価値があった。
90分ちょっとと時間も短く、気楽に観られてよかったです。
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- 雪 ソチオリンピック
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2014.02.08 Saturday▼東京では13年ぶりの大雪警報。家の中も甚だ寒し。家の周りは10センチほどの積雪。
友人夫婦の家にお邪魔。友人夫婦の子ター坊(小学4年)と雪合戦をする。雪合戦というのは、人間関係が出やすい。わたしだけがター坊家から集中的に狙われた。この恨み、忘れずに生きていこう。
ター坊家に戻ると、ター坊のおじいちゃんとおばあちゃんがいた。ソチオリンピックを一緒に観る。スノーボードのスロープスタイルという競技をやっていた。始まるまでは特に期待もしてないけど観だしたら面白い。
ただ、全然見方がわかってないので「ものすごく回った!」とか「縦に回った!」とか、そんものである。「今の滑りは92点だな」とか「いや85点ぐらい」とか、まったく滑れない連中が偉そうに言う。金メダル2、3個持ってる感じで言う。
スノーボードはみんな楽しんでやっている感じでいいですね。柔道などはお家芸ということもあって、銀メダルを取ってるのに選手がつらそうな顔をしているときがある。悲壮感漂うというか。
スノーボードは遊びがそのまま競技になったようで、選手同士もハグをしたり仲が良さそうに見える。実際はいろいろあるんでしょうけども。日本の角野選手も8位と健闘。楽しめた。ター坊のおじいちゃんが表彰台に上がった選手を見て「欧米列強ばかりか」とつぶやいていたのが印象的だった。明治時代か。
▼友人の家の猫の話。友人が病気で寝込んだときは枕元にやって来て、手を友人の額にあてるという。それが少し鬱陶しいんだと笑っていた。友人は猫が自分のことを心配していると思っているらしい。そうかもしれない。でも、ご飯が欲しいだけかもしれないし、額が温かいから触っていたいだけかもしれない。
友人がトイレに立ったとき、そばにいた猫に「実際どうなの?」と訊いてみる。「うにゃん」と言うなり、隣の部屋に行ってしまった。つまらないことを訊くなという素振り。さては、こいつ、喋れるな。
▼ター坊は洗面器に雪を山盛りにとってきた。手の中でギュッと雪を握りしめて氷を作る仕事に励んでいた。ご苦労様です。
▼夜、お雑煮。寒さもあり格別の出来。
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- 映画「世界にひとつのプレイブック」
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2014.02.05 Wednesday世界にひとつのプレイブック
Silver Linings Playbook / 2012年 / アメリカ / 監督:デヴィット・O・ラッセル / コメディ、恋愛
【あらすじ】
躁鬱病のパット(ブラッドリー・クーパー 右)と、夫をなくして不安定なティファニー(ジェニファー・ローレンス 左)が出会います。
【感想】
病気のことでコメディを作るのって難しそうですよねえ。笑っていいのかどうかわからない場合もあるし。邦画でも難病ものは多いですが、病気を扱ったコメディはないような気がする。
一番右の人は、主人公パットと同じ精神病院にいた患者ダニー。「ラッシュアワー」でジャッキー・チェンと共演し話題になったクリス・タッカーです。ちょっと太ったなあ。元気そうでなにより。患者役だけど。
そもそも出てくる人が全員病気っぽいんですよね。主人公の父役であるデ・ニーロも、かなり神経質で不安定。主人公の兄も、弟に向かってひどいことを言う。まあ、まともな人がいない。みんなどこかおかしい。ロバート・デ・ニーロが主演したしみじみとした作品「みんな元気」がありますが、この映画は「みんな病気」である。「みんな元気」とセットで売ればいいのに。
この映画、タイトルが難しいんですね。「Silver Linings Playbook」ですが「シルバーライニングス」は服の銀の裏地を指している。曇っている日でも、雲の裏側は光り輝いている銀の裏地なのだということわざがある。どんなにつらくても希望があるというのが「シルバーライニングス」の意味である。「プレイブック」はアメフトの戦術本である。この映画では家族(特に父と子)はアメフトによって強く結びついている。
知ってたかのように書きましたが、これ、ラジオで映画評論家の町山さんが仰っていました。さすがである。これからは全部、人が言ったことを受け売っていこう。最初から自分で知ってたかのように書こう。
ヒロインのティファニー(ジェニファー・ローレンス、トップの写真左)は、夫を事故でなくし、そのせいで不安定になってしまった女性を演じている。ヒステリックになったときの暴れっぷりが怖い。あと、自分がいいと思ったことは相手もいいと思っているに違いないという、押し付けてくる感じとか。怖いということは名演技なんでしょうねえ。ジェニファー・ローレンスが怖かったせいか、最後のほうはパット(ブラッドリー・クーパー)が普通の人に見えた。面白いラブコメディだったなあ。
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- けもの道
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2014.02.03 Monday▼友人夫婦の家を訪ねる。友人夫婦の家の近くには頭の高さぐらいまでの植え込みがある。夏には蜂が多く出るので近づきたくない。今の時期は乾燥して丸まった枯れ葉が枝にしがみついている。植え込みから黄色い塊が見えたと思うと、友人夫婦の子ター坊(小学校4年)が現れた。わたしを見つけると「お」と言った。
ター坊は植え込みをガサガサと掻き分けて出てくると、ダウンジャケットについた枯れ葉を払いながら疲れたようにつぶやいた。
「なかなかの長旅でした‥‥」
「何やってんの?」
「けもの道」
「けもの道って何?」
そんなことも知らないのか、と呆れたような顔をする。
「けもの道っていうのは、動物の通り道のことでしょ」
「いや、それはわかってるけど」
「今、けもの道してたところ」
「ふーん‥‥。そりゃ、また変わったことをねえ‥‥」
「したい?けもの道?」
「え?」
「したいんなら付き合ってあげるけど」
「はあ‥‥、まあ‥‥、そうねえ。じゃあ、してみようかなあ‥‥」
「『してみようかなあ』じゃなくて『お願いします』でしょ!」
「え、なに、その上下関係発生するかんじ」
「したくないの?けもの道」
「えー、そうだねえ。じゃあ‥‥、お願いします、けもの道先輩」
「ついてきなさい」
そう言うとター坊は、たった今出てきた植え込みを掻き分け、中に入っていく。
「ちょっとー!こんなヤブの中、入ってくの?」
振り返って不満そうにわたしを見る。
「しゅんくん(わたしのこと)が、けもの道したいって言ったんでしょ!」
それだけ言うと、ずんずん進んでいく。ター坊が掻き分けた道が塞がらないように、慌てて後を追う。手や顔をすりむきそうだ。しかし、このけもの道という遊びはなんなのだろうか。5,6メートルも植え込みを歩くと、雑木林に抜けた。
ター坊は体についた枯れ葉を払っている。黄色のダウンジャケットに穴が開いていた。
「こんな遊び、学校で流行ってるの?」
「何が?」
「けもの道」
「流行ってないよ。まだ二回しかやってないんだから」
おまえ、今さっきまで、けもの道歴三十年みたいな雰囲気を出していただろう。聞けば、授業中に「けもの道」のことを学び、なんとなくやってみただけらしい。帰りは、植え込みを迂回してふつうの道を歩いて帰った。もう、けもの道ブームは去った。痛いし。
ター坊の家にお邪魔した。ター坊母が、ター坊が着ていたダウンジャケットの破れを見つけた。穴が開いて白い羽根が出ている。
「ちょっと!これどうしたの?」
ター坊が肩の破れを隠しつつ決まり悪そうに言った。
「しゅんくんが、けもの道やりたいって言うから‥‥」
なんだ、おまえ、わたしがけもの道をやりたがったみたいに!というか、けもの道をやるってなんだよ。わたしは渋々、お付き合いでやったんですよ。言わば、接待けもの道である。
「えー、しゅんくんが『お願いします』って言うから行ったのにー」
おまえ、どんどんずるくなるね。将来はオレオレ詐欺をやるね。間違いない。これが成長ということなのかしら。
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